「ゴジラ」まで使う、朝日のプロパガンダ
JR博多駅に「ゴジラ」が登場したそうです。毎日新聞の記事によれば、ハリウッド版「GODZILLA」のPR用で、高さ2mのミニチュア像とのこと。
ハリウッド版ゴジラは16年前にも制作されており、今回が2作目ということになります。不評だった前作と違い今回は大ヒットしているようです。
写真で見る限り、前作のトカゲの化け物とは違い、日本のゴジラに近いようです。
(博多駅に設置されたゴジラ)
そういえば人民朝日が5月25日、ゴジラまで使って「反戦」「反原発」「反集団的自衛権行使」のプロパガンダ記事を載せていました。
主演者の一人、宝田明さんに「戦時中に体で感じた恐怖を思い出させたのが、ゴジラだった。アンチ戦争のメッセージに共感させるだけの力が
あった」「あのときも、一部の人たちの判断で国のかたちが変わってしまった。立場の弱い人が蹂躙されるのが戦争。あんなこと、もう誰にも経験
してほしくない」などと語らせています。
しかし反戦を主張するなら、満州引揚者の宝田氏が語るべきは「日本が悪かった」ではなく、満州居留民に対するソ連軍の悪逆非道な行いと、
満州からの逃避行の艱難辛苦ではないのか。「一部の人たちの判断で」ではなく、それを煽り、焚付け、伝えるべき真実を報道せず、戦意高揚を
謳い続けた朝日をはじめとする報道関係への非難ではないのか。
誰も戦争など望んでなどいない。「集団的自衛権行使を容認にすれば、戦争できる国なる」と不安を煽っているのは、朝日をはじめとする反日マス
コミと左翼勢力ではないのか。容認派は「戦争が起きないようにするための、抑止力として必要だ」と考えている。
東シナ海の尖閣諸島では何が起きている? 南シナ海で支那は何をしている? ウクライナでは何が起きている?
すでにサイバー空間では、熾烈な戦いが繰り返されており、我が国の対応の遅れは深刻な状況になりつつある。
安倍総理が言うように、世界の情勢は一国だけでは対応が難しくなってきているのが現実であり、国の安全保障にかかわる重要なことを、日本国内
の政治問題に矮小化してしまい、安倍政権叩きの材料にしているだけではないのか。
現行の法体系では対処できない事態を想定して、国民の安全と生命を守るためにどうするのかを政府に求めるのが、報道機関の役目ではないのか。
=============================================================================
平成26年5月26日 産経新聞 【産経抄】より
ゴジラの復活
先日コラムに取り上げた黒澤明監督の『七人の侍』が公開されたのは、昭和29(1954)年だった。同じ年に、黒澤監督の親友だった
本多猪四郎監督が『ゴジラ』を世に送り出し、怪獣ブームを巻き起こす。
▼それから60年たった今、米国の特撮怪獣映画「GODZILLA(ゴジラ)」が、大ヒットしている。日本でも7月に公開される予定だ。
▼米国版ゴジラは、16年前にも製作されている。ただしこのゴジラは、日本の元祖ゴジラには似ても似つかぬ、巨大化したトカゲの
ような姿をしていた。ゴジラファンをがっかりさせて、興行的にも失敗する。今回のゴジラは、元祖のイメージに忠実に作られている。
それがヒットの要因のひとつのようだ。
▼米国版ゴジラでは、原発事故が描かれているという。元祖ゴジラは水爆実験で目覚めたことになっている。東京が火の海となり、
観客にかつての空襲の恐怖を思い出させるようなシーンもある。ということは、新旧のゴジラは戦争や原発について日本人に警告し
ている。まして、集団的自衛権の行使容認などもってのほかだ。
▼きのうの朝日新聞が、こんな趣旨の記事を載せていた。
しかし映画評論家の樋口尚文さんによれば、少なくとも元祖ゴジラは、反戦や反核をテーマにした映画ではなかった。8年間もの軍
隊生活を送っている本多監督から、直接聞いた話だという。「監督が作りたかったのは戦後の暗い気分をアナーキーに壊しまくって
くれる和製『キングコング』のような大怪獣映画」だった(『グッドモーニング、ゴジラ』国書刊行会)。
▼なんでもかんでも、反戦、反原発に結びつけなくてもよかろうに。ひとりごちつつ、昨夜久しぶりにDVDで、娯楽映画の傑作を堪能
した。
=============================================================================
2014年5月25日 朝日新聞より
戦争・原発、ゴジラの警告 登場60年、日米でリメーク版公開
戦争と核の恐怖を背景に、ゴジラがスクリーンに登場して60年。米国で今年リメーク版が完成し、日本でもこの夏、公開される。
再び脚光を浴びる特撮映画の「元祖」に、いまという時代の危うさを重ねる人たちがいる。
■「悲惨さ共感できた国、どこに」
1954年公開の1作目に主演した俳優宝田明さん(80)は今年、30を超すメディアの取材を受けた。1本も断っていない。
戦争を知る世代として、いま感じる「きな臭さ」も一緒に伝えたいと思うからだ。「戦争の悲惨さを描いたゴジラに共感できたあの国
は、どこにいったのか」
初代ゴジラは水爆実験で目覚め、安住の地を追われ日本に出現したという設定だ。東京の街を破壊し、放射能をまき散らす。
逃げ惑う民衆は、かつての空襲や原爆の恐怖を思い出す――。そんな様子を描いた。
この年の3月、米国の水爆実験で被曝した第五福竜丸事件があった。
「民衆が戦争といった暴力にあったとき、いかに徹底的にいじめられるか、片鱗だけでも出れば」。監督した故・本多猪四郎さんは
生前、こう記した。第2次世界大戦の敗北から9年。朝鮮戦争の特需で、日本は高度経済成長期の入り口にあった。
「路上の傷痍軍人も減り、戦争の影が薄れつつあった」と宝田さんは振り返る。そんな時代だったからこそ、961万人を動員する大
ヒットになったと思う。「戦時中に体で感じた恐怖を思い出させたのが、ゴジラだった。アンチ戦争のメッセージに共感させるだけの
力があった」
宝田さんは11歳のとき、旧満州(中国東北部)で終戦を迎えた。侵攻してきた旧ソ連軍に腹を撃たれ、麻酔なしで弾を取り出した。
若い女性がソ連兵に連れ去られるところも鮮明に覚えている。傷痕はいまもうずく。
十分な議論もなく、着々と集団的自衛権の行使容認に突き進む政治が怖いという。
「あのときも、一部の人たちの判断で国のかたちが変わってしまった。立場の弱い人が蹂躙されるのが戦争。あんなこと、もう誰にも
経験してほしくない」
■「人は制御できぬもの扱うな」
71年の「ゴジラ対ヘドラ」に、社会問題になっていた公害を取り入れたのは、監督の坂野(ばんの)義光さん(83)だ。ヘドロから生ま
れた怪獣ヘドラは、有害物質をばらまき、人間を溶かす。自然をないがしろにする社会への警告を込めた。
パビリオンの映像制作でかかわった前年の大阪万博で、東京と往復するなか、静岡県・田子の浦港のヘドロ公害を目にした。原因
は工場排水だった。人類の進歩をたたえる万博の裏にある現実に衝撃を受けた。
今月8日、ハリウッドであった米国版ゴジラの試写会「ワールドプレミア」に招かれた。原発事故が描かれていた。
「人間はコントロールできないものを扱うべきじゃない」と語るギャレス・エドワーズ監督に共感した。
米国版ができる前、自身も東京電力福島第一原発の汚染水から生まれた怪獣の映画を企画書にまとめて、映画会社などに送って
いた。「私たちは事故から何を学んだのか。二度と事故を起こさない道は原発を無くすことだ。ゴジラの警告はいつ人間に届くのか」
文芸評論家の加藤典洋さん(66)はゴジラを「戦死者の亡霊」という。早稲田大を退職するこの春まで、第1作を戦後史の授業で取り
上げてきた。過去と向き合い、なぜ誤ったのかを考え抜く大切さを伝えるためだった。
ここ数年、「過去の過ちを認めることこそが強さだ」ということを、学生に伝えることの困難さが強まったという。若者が保守的になっ
たと感じている。ネット右翼やヘイトスピーチとも根底で通じていると考える。
「戦争の苦しさが忘れられようとしている。ゴジラが日本に戻ってきたら、『自分の死はいったいなんだったのだ』と怒るのではないだ
ろうか」 (東郷隆)
■初代ゴジラに映る「戦争の記憶」
◎ゴジラが放射能をまき散らしていると国会で報告を受け、政治家が「軽率に公表した暁には国民大衆を恐怖に陥れ、ひいては政
治、経済、外交まで混乱を引き起こす」。それを聞いた別の女性議員が「ばかもの! 事実は堂々と公表しろ」。
◎ゴジラの存在が新聞で報道され、女性が「いやね、原子マグロだ放射能の雨だ、そのうえ今度はゴジラときたわ。せっかく長崎の
原爆から命拾いしてきた、大切な体なんだもの」。別の男性が応じる。「ああ、また疎開か、いやだなあ」
◎核兵器を超える残忍な新兵器を開発した科学者が使用を尻ごみし、「もしもいったん(新兵器の)オキシジェン・デストロイヤーを
使ったが最後、世界の為政者が黙って見ているはずがないんだ。必ずこれを武器として使用するに決まっている。原爆対原爆、水
爆対水爆、その上さらにこの新しい武器を人類の上に加えることは科学者として、いや一個の人間として許すわけにはいかない」
<ゴジラ>
1954年から2004年までに28作品制作され、キングギドラやモスラなど数々の怪獣が登場した。
国内の観客動員数は累計9,975万人。邦画のシリーズ物では「ドラえもん」に次ぐ。
98年には初のハリウッド版も作られた。日本初の怪獣特撮映画となった1作目はデジタルリマス
ター版が6月7日から上映される。米国版最新作の日本公開は7月25日。
東宝MOVIEチャンネルより
「ゴジラ」(1954年) 予告編
2013年01月24日 毎日新聞 そして名画があった/58 (玉木研二)より
「ゴジラ」
「恐怖の産物」反省と苦悩
封切りは1954(昭和29)年11月3日「文化の日」だった。この日の朝のことを東宝のプロデューサー田中友幸は後年こう書いている。
「わたしが国電渋谷駅をハチ公銅像側に出ると、行列ができている。なんの行列かなと思ってよく見ると、行列は交叉点を渡り道玄坂まで
続いている。渋谷東宝の『ゴジラ』を見に来てくれたお客様だと気づき、電撃のような感動の波が身内を走り抜けた」(83年刊「東宝特撮
映画全史」)
日本初のSF大作「ゴジラ」(監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二)が大ヒットした背景には、現実世界の核兵器開発競争の恐怖があ
った。この年3月、アメリカによるビキニ環礁水爆実験で日本漁船員が「死の灰」を浴びて被ばくする第五福竜丸事件が起き、これが製作
の大きなモチーフになったことはよく知られている。放射能は日本本土にも及んだ。
原水爆禁止の署名運動は全国に広まり、翌年には広島で第1回の原水禁世界大会を開催するまでになる。
核実験の落とし子ゴジラは奇想天外の産物ではない。まことにリアルな、肌に接するような恐怖、そして地球全滅兵器をつくり出した人間
の愚行の象徴だった。太平洋の底深くに潜んでいた太古の巨大生物が、核実験で安住の地を奪われ、東京湾岸に襲来するという設定。
熱線を吐くなど異様な能力を身につけている。まず上陸した品川では八ツ山橋を破壊し、通勤客で満員の電車を襲う。次に芝浦辺りから
上陸、急ぎ構築された高圧電流の防御線もたちまち破り、都心へ向かう。「防衛隊」の戦車なども歯が立たない。その緊迫した無線交信に
は当時の懐かしい地名、町名も交じる。
「三田台町の火災は南寺町、伊皿子(いさらご)町方面に延焼中」
「札の辻警戒陣地は突破され、第49戦車隊は全滅。以後の行動不可能」
「以後各隊は攻撃態勢を解き、極力消火に努めるとともに、負傷者の救出に全力を傾倒せよ」……。
ゴジラは破壊し焼き尽くしながら、戦後復興と繁栄を物語るネオンの街、銀座に達する。前年放送が始まったテレビの実況中継が行われ、
アナウンサーが伝える。「信じられません! その信じられない事件が今私の眼前で展開されているのであります。見渡せば、銀座尾張町
から新橋、田町、芝、芝浦方面は全く火の海です」 国会議事堂も破壊された。
「ゴジラはこのテレビ塔に向かって参りました。もう待避するいとまもありません。いよいよ最期です。ものすごい力です。さようなら皆さん!
さようなら!」 ゴジラは隅田川に至ると勝鬨(かちどき)橋を破壊し、襲いかかるジェット戦闘機もものともせず、東京湾に消えた。
死傷者に埋まる救護所。その惨状と悲嘆。多くのエキストラが使われたが、画面から伝わる現実感は多くが戦災経験者だからだろう。
ゴジラが炎上させた街々はつい9年前、米軍の爆撃にさらされた街でもあるのだ。
戦争で心身深く傷ついた若い科学者が登場する。彼は研究の過程で、酸素破壊で水中の生物を窒息死させ液状にする「オキシジェン・
デストロイヤー」という破壊装置を偶然発明していた。これを知った者から、ゴジラ制圧に使用すべきだと言われるが、彼は断る。
「使ったら最後、世界の為政者が黙って見ているはずがないんだ。必ずこれを武器として使用するに決まっている。原爆、水爆、さらにこの
新しい恐怖の武器を人類の上に加えることは科学者として、いや、一個人として許すわけにいかない」
あの時代にあった科学者の反省と自覚がその言葉に反映している。だが、ゴジラ襲来の甚大な被害を前に、彼は折れ、1回だけという条件
で使用を認める。そしてその後メカニズムを永遠に封じるために、ある決意をしてゴジラが潜む海域に向かう……。
そのクライマックスは、何度見ても心に染み入る。シリーズ化されたゴジラ作品の中で最古にして最高の傑作とされるゆえんは何か。
切迫感みなぎる時代のテーマと正面から向き合い、メッセージを誠実に発信したからだ。
伊福部昭(いふくべあきら)のあの音楽。無念の歯ぎしりのような咆哮。それとともにゴジラが今の不夜城のごとき湾岸高層ビル群の沖合
に浮かぶ姿を思い描いてみる。
映画のラストで志村喬が演じる古生物学者が言う。
「もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれない」
ハリウッド版ゴジラは16年前にも制作されており、今回が2作目ということになります。不評だった前作と違い今回は大ヒットしているようです。
写真で見る限り、前作のトカゲの化け物とは違い、日本のゴジラに近いようです。
(博多駅に設置されたゴジラ)
そういえば人民朝日が5月25日、ゴジラまで使って「反戦」「反原発」「反集団的自衛権行使」のプロパガンダ記事を載せていました。
主演者の一人、宝田明さんに「戦時中に体で感じた恐怖を思い出させたのが、ゴジラだった。アンチ戦争のメッセージに共感させるだけの力が
あった」「あのときも、一部の人たちの判断で国のかたちが変わってしまった。立場の弱い人が蹂躙されるのが戦争。あんなこと、もう誰にも経験
してほしくない」などと語らせています。
しかし反戦を主張するなら、満州引揚者の宝田氏が語るべきは「日本が悪かった」ではなく、満州居留民に対するソ連軍の悪逆非道な行いと、
満州からの逃避行の艱難辛苦ではないのか。「一部の人たちの判断で」ではなく、それを煽り、焚付け、伝えるべき真実を報道せず、戦意高揚を
謳い続けた朝日をはじめとする報道関係への非難ではないのか。
誰も戦争など望んでなどいない。「集団的自衛権行使を容認にすれば、戦争できる国なる」と不安を煽っているのは、朝日をはじめとする反日マス
コミと左翼勢力ではないのか。容認派は「戦争が起きないようにするための、抑止力として必要だ」と考えている。
東シナ海の尖閣諸島では何が起きている? 南シナ海で支那は何をしている? ウクライナでは何が起きている?
すでにサイバー空間では、熾烈な戦いが繰り返されており、我が国の対応の遅れは深刻な状況になりつつある。
安倍総理が言うように、世界の情勢は一国だけでは対応が難しくなってきているのが現実であり、国の安全保障にかかわる重要なことを、日本国内
の政治問題に矮小化してしまい、安倍政権叩きの材料にしているだけではないのか。
現行の法体系では対処できない事態を想定して、国民の安全と生命を守るためにどうするのかを政府に求めるのが、報道機関の役目ではないのか。
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平成26年5月26日 産経新聞 【産経抄】より
ゴジラの復活
先日コラムに取り上げた黒澤明監督の『七人の侍』が公開されたのは、昭和29(1954)年だった。同じ年に、黒澤監督の親友だった
本多猪四郎監督が『ゴジラ』を世に送り出し、怪獣ブームを巻き起こす。
▼それから60年たった今、米国の特撮怪獣映画「GODZILLA(ゴジラ)」が、大ヒットしている。日本でも7月に公開される予定だ。
▼米国版ゴジラは、16年前にも製作されている。ただしこのゴジラは、日本の元祖ゴジラには似ても似つかぬ、巨大化したトカゲの
ような姿をしていた。ゴジラファンをがっかりさせて、興行的にも失敗する。今回のゴジラは、元祖のイメージに忠実に作られている。
それがヒットの要因のひとつのようだ。
▼米国版ゴジラでは、原発事故が描かれているという。元祖ゴジラは水爆実験で目覚めたことになっている。東京が火の海となり、
観客にかつての空襲の恐怖を思い出させるようなシーンもある。ということは、新旧のゴジラは戦争や原発について日本人に警告し
ている。まして、集団的自衛権の行使容認などもってのほかだ。
▼きのうの朝日新聞が、こんな趣旨の記事を載せていた。
しかし映画評論家の樋口尚文さんによれば、少なくとも元祖ゴジラは、反戦や反核をテーマにした映画ではなかった。8年間もの軍
隊生活を送っている本多監督から、直接聞いた話だという。「監督が作りたかったのは戦後の暗い気分をアナーキーに壊しまくって
くれる和製『キングコング』のような大怪獣映画」だった(『グッドモーニング、ゴジラ』国書刊行会)。
▼なんでもかんでも、反戦、反原発に結びつけなくてもよかろうに。ひとりごちつつ、昨夜久しぶりにDVDで、娯楽映画の傑作を堪能
した。
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2014年5月25日 朝日新聞より
戦争・原発、ゴジラの警告 登場60年、日米でリメーク版公開
戦争と核の恐怖を背景に、ゴジラがスクリーンに登場して60年。米国で今年リメーク版が完成し、日本でもこの夏、公開される。
再び脚光を浴びる特撮映画の「元祖」に、いまという時代の危うさを重ねる人たちがいる。
■「悲惨さ共感できた国、どこに」
1954年公開の1作目に主演した俳優宝田明さん(80)は今年、30を超すメディアの取材を受けた。1本も断っていない。
戦争を知る世代として、いま感じる「きな臭さ」も一緒に伝えたいと思うからだ。「戦争の悲惨さを描いたゴジラに共感できたあの国
は、どこにいったのか」
初代ゴジラは水爆実験で目覚め、安住の地を追われ日本に出現したという設定だ。東京の街を破壊し、放射能をまき散らす。
逃げ惑う民衆は、かつての空襲や原爆の恐怖を思い出す――。そんな様子を描いた。
この年の3月、米国の水爆実験で被曝した第五福竜丸事件があった。
「民衆が戦争といった暴力にあったとき、いかに徹底的にいじめられるか、片鱗だけでも出れば」。監督した故・本多猪四郎さんは
生前、こう記した。第2次世界大戦の敗北から9年。朝鮮戦争の特需で、日本は高度経済成長期の入り口にあった。
「路上の傷痍軍人も減り、戦争の影が薄れつつあった」と宝田さんは振り返る。そんな時代だったからこそ、961万人を動員する大
ヒットになったと思う。「戦時中に体で感じた恐怖を思い出させたのが、ゴジラだった。アンチ戦争のメッセージに共感させるだけの
力があった」
宝田さんは11歳のとき、旧満州(中国東北部)で終戦を迎えた。侵攻してきた旧ソ連軍に腹を撃たれ、麻酔なしで弾を取り出した。
若い女性がソ連兵に連れ去られるところも鮮明に覚えている。傷痕はいまもうずく。
十分な議論もなく、着々と集団的自衛権の行使容認に突き進む政治が怖いという。
「あのときも、一部の人たちの判断で国のかたちが変わってしまった。立場の弱い人が蹂躙されるのが戦争。あんなこと、もう誰にも
経験してほしくない」
■「人は制御できぬもの扱うな」
71年の「ゴジラ対ヘドラ」に、社会問題になっていた公害を取り入れたのは、監督の坂野(ばんの)義光さん(83)だ。ヘドロから生ま
れた怪獣ヘドラは、有害物質をばらまき、人間を溶かす。自然をないがしろにする社会への警告を込めた。
パビリオンの映像制作でかかわった前年の大阪万博で、東京と往復するなか、静岡県・田子の浦港のヘドロ公害を目にした。原因
は工場排水だった。人類の進歩をたたえる万博の裏にある現実に衝撃を受けた。
今月8日、ハリウッドであった米国版ゴジラの試写会「ワールドプレミア」に招かれた。原発事故が描かれていた。
「人間はコントロールできないものを扱うべきじゃない」と語るギャレス・エドワーズ監督に共感した。
米国版ができる前、自身も東京電力福島第一原発の汚染水から生まれた怪獣の映画を企画書にまとめて、映画会社などに送って
いた。「私たちは事故から何を学んだのか。二度と事故を起こさない道は原発を無くすことだ。ゴジラの警告はいつ人間に届くのか」
文芸評論家の加藤典洋さん(66)はゴジラを「戦死者の亡霊」という。早稲田大を退職するこの春まで、第1作を戦後史の授業で取り
上げてきた。過去と向き合い、なぜ誤ったのかを考え抜く大切さを伝えるためだった。
ここ数年、「過去の過ちを認めることこそが強さだ」ということを、学生に伝えることの困難さが強まったという。若者が保守的になっ
たと感じている。ネット右翼やヘイトスピーチとも根底で通じていると考える。
「戦争の苦しさが忘れられようとしている。ゴジラが日本に戻ってきたら、『自分の死はいったいなんだったのだ』と怒るのではないだ
ろうか」 (東郷隆)
■初代ゴジラに映る「戦争の記憶」
◎ゴジラが放射能をまき散らしていると国会で報告を受け、政治家が「軽率に公表した暁には国民大衆を恐怖に陥れ、ひいては政
治、経済、外交まで混乱を引き起こす」。それを聞いた別の女性議員が「ばかもの! 事実は堂々と公表しろ」。
◎ゴジラの存在が新聞で報道され、女性が「いやね、原子マグロだ放射能の雨だ、そのうえ今度はゴジラときたわ。せっかく長崎の
原爆から命拾いしてきた、大切な体なんだもの」。別の男性が応じる。「ああ、また疎開か、いやだなあ」
◎核兵器を超える残忍な新兵器を開発した科学者が使用を尻ごみし、「もしもいったん(新兵器の)オキシジェン・デストロイヤーを
使ったが最後、世界の為政者が黙って見ているはずがないんだ。必ずこれを武器として使用するに決まっている。原爆対原爆、水
爆対水爆、その上さらにこの新しい武器を人類の上に加えることは科学者として、いや一個の人間として許すわけにはいかない」
<ゴジラ>
1954年から2004年までに28作品制作され、キングギドラやモスラなど数々の怪獣が登場した。
国内の観客動員数は累計9,975万人。邦画のシリーズ物では「ドラえもん」に次ぐ。
98年には初のハリウッド版も作られた。日本初の怪獣特撮映画となった1作目はデジタルリマス
ター版が6月7日から上映される。米国版最新作の日本公開は7月25日。
東宝MOVIEチャンネルより
「ゴジラ」(1954年) 予告編
2013年01月24日 毎日新聞 そして名画があった/58 (玉木研二)より
「ゴジラ」
「恐怖の産物」反省と苦悩
封切りは1954(昭和29)年11月3日「文化の日」だった。この日の朝のことを東宝のプロデューサー田中友幸は後年こう書いている。
「わたしが国電渋谷駅をハチ公銅像側に出ると、行列ができている。なんの行列かなと思ってよく見ると、行列は交叉点を渡り道玄坂まで
続いている。渋谷東宝の『ゴジラ』を見に来てくれたお客様だと気づき、電撃のような感動の波が身内を走り抜けた」(83年刊「東宝特撮
映画全史」)
日本初のSF大作「ゴジラ」(監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二)が大ヒットした背景には、現実世界の核兵器開発競争の恐怖があ
った。この年3月、アメリカによるビキニ環礁水爆実験で日本漁船員が「死の灰」を浴びて被ばくする第五福竜丸事件が起き、これが製作
の大きなモチーフになったことはよく知られている。放射能は日本本土にも及んだ。
原水爆禁止の署名運動は全国に広まり、翌年には広島で第1回の原水禁世界大会を開催するまでになる。
核実験の落とし子ゴジラは奇想天外の産物ではない。まことにリアルな、肌に接するような恐怖、そして地球全滅兵器をつくり出した人間
の愚行の象徴だった。太平洋の底深くに潜んでいた太古の巨大生物が、核実験で安住の地を奪われ、東京湾岸に襲来するという設定。
熱線を吐くなど異様な能力を身につけている。まず上陸した品川では八ツ山橋を破壊し、通勤客で満員の電車を襲う。次に芝浦辺りから
上陸、急ぎ構築された高圧電流の防御線もたちまち破り、都心へ向かう。「防衛隊」の戦車なども歯が立たない。その緊迫した無線交信に
は当時の懐かしい地名、町名も交じる。
「三田台町の火災は南寺町、伊皿子(いさらご)町方面に延焼中」
「札の辻警戒陣地は突破され、第49戦車隊は全滅。以後の行動不可能」
「以後各隊は攻撃態勢を解き、極力消火に努めるとともに、負傷者の救出に全力を傾倒せよ」……。
ゴジラは破壊し焼き尽くしながら、戦後復興と繁栄を物語るネオンの街、銀座に達する。前年放送が始まったテレビの実況中継が行われ、
アナウンサーが伝える。「信じられません! その信じられない事件が今私の眼前で展開されているのであります。見渡せば、銀座尾張町
から新橋、田町、芝、芝浦方面は全く火の海です」 国会議事堂も破壊された。
「ゴジラはこのテレビ塔に向かって参りました。もう待避するいとまもありません。いよいよ最期です。ものすごい力です。さようなら皆さん!
さようなら!」 ゴジラは隅田川に至ると勝鬨(かちどき)橋を破壊し、襲いかかるジェット戦闘機もものともせず、東京湾に消えた。
死傷者に埋まる救護所。その惨状と悲嘆。多くのエキストラが使われたが、画面から伝わる現実感は多くが戦災経験者だからだろう。
ゴジラが炎上させた街々はつい9年前、米軍の爆撃にさらされた街でもあるのだ。
戦争で心身深く傷ついた若い科学者が登場する。彼は研究の過程で、酸素破壊で水中の生物を窒息死させ液状にする「オキシジェン・
デストロイヤー」という破壊装置を偶然発明していた。これを知った者から、ゴジラ制圧に使用すべきだと言われるが、彼は断る。
「使ったら最後、世界の為政者が黙って見ているはずがないんだ。必ずこれを武器として使用するに決まっている。原爆、水爆、さらにこの
新しい恐怖の武器を人類の上に加えることは科学者として、いや、一個人として許すわけにいかない」
あの時代にあった科学者の反省と自覚がその言葉に反映している。だが、ゴジラ襲来の甚大な被害を前に、彼は折れ、1回だけという条件
で使用を認める。そしてその後メカニズムを永遠に封じるために、ある決意をしてゴジラが潜む海域に向かう……。
そのクライマックスは、何度見ても心に染み入る。シリーズ化されたゴジラ作品の中で最古にして最高の傑作とされるゆえんは何か。
切迫感みなぎる時代のテーマと正面から向き合い、メッセージを誠実に発信したからだ。
伊福部昭(いふくべあきら)のあの音楽。無念の歯ぎしりのような咆哮。それとともにゴジラが今の不夜城のごとき湾岸高層ビル群の沖合
に浮かぶ姿を思い描いてみる。
映画のラストで志村喬が演じる古生物学者が言う。
「もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれない」
テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済