筑紫の国の片隅で…

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高橋洋一氏も、朝日に掲載拒否されていた

朝日に記事の掲載拒否を受けたのは、池上彰氏だけではなかったようですね。
高橋洋一嘉悦大教授が、9月12日の夕刊フジのコラムに以下の記事を寄稿しておられましたが、もっと詳しい内容の
記事を9月8日、『現代ビジネス』に“池上さんだけじゃない!筆者が体験した「朝日新聞」もう一つの掲載拒否原稿を
読者に問う”
というタイトルで書いておられました。その中で「池上さんの話はその日のうちに大きくなったが、筆者の件
はその前日に少しツイートしただけなので大きな話題にもなっていない」「筆者のような例は、この雑誌では珍しくないら
しい。山形浩生氏や玉木正之氏のブログでも似たような掲載拒否の件が報告されていた」と語っておられます。
新聞にしても雑誌にしても、社の方針とか編集側の思惑など様々な理由があろうことは想像に難くありません。相当の
理由なら掲載拒否も止むを得ない場合も有るでしょう。しかし、池上氏の掲載拒否理由は不可解で納得いかないもの
でしたし、高橋氏の場合、「内容が高度すぎて理解できない」「書き直す時間はない」から掲載できないというのも理由
になっていません。「気に入らないもの」「都合が悪いもの」は、「無視」するか「無かった」ことにするという朝日の体質が
如実に表れているのではないでしょうか。

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2014年9月12日 zakzak 【「日本」の解き方】より

わたしも朝日に掲載拒否された 気に食わない原稿は排除

朝日新聞は、ジャーナリスト、池上彰氏の連載「新聞ななめ読み」の掲載をいったん見合わせた後、9月4日付で掲載した。
同じ頃、実は筆者も掲載拒否を受けた。ただし、こちらは掲載拒否のままである。
筆者が依頼されたのは、朝日新聞のジャーナリスト学校が発行する『Journalism[ジャーナリズム]』という雑誌(販売は
朝日新聞出版)の原稿だ。7月23日付メールで「アベノミクスをどう評価するかと同時に安倍晋三政権の経済政策や、メ
ディアのアベノミクス報道に対する姿勢などを批判する内容の論考」を依頼された。
メールだけではなく、打ち合わせも8月11日に1時間ほど行った。その打ち合わせでは、朝日新聞の慰安婦報道が話題だ
ったので、朝日新聞の経済報道を題材として書きたいという筆者の意向を述べた。
アベノミクスの第1の矢(金融政策)と第2の矢(財政政策)について、朝日新聞は、金融引き締めと緊縮財政という、筆
者から見ればデフレ脱却に最もふさわしくない政策を推していた。つまり、金融緩和に反対で、増税に賛成という立場だ。
経済学的な視点から見れば、これはダメな組み合わせで、正解は金融緩和と拡張財政だ。
同紙の原真人編集委員の論考が典型的だったので、それを題材にして間違いを指摘した。その後で、国民には金融緩
和反対、増税をいいながら、新聞業界には軽減税率を求めるのはおかしいことも書いた。その原稿を締め切り期限内に
担当者に送った。9月1日夜、「内容が高度すぎて理解できない」という理由で掲載できないとメールがあり、書き直す時
間はないので原稿料全額をすぐ支払う旨も書かれていた。時間的に筆者としては修正は可能だったが、一方的な掲載
拒否だった。
朝日新聞ジャーナリスト学校の『Journalism[ジャーナリズム]』なのだから、建前くらいはジャーナリストでいてほしい。
依頼があったとき、メディアによって色合いがあり、今回はアベノミクス批判が8割で、残り2割にその反対意見をあて、筆
者はその中で扱われていることくらいは察しがついた。しかし、その2割の中でも意見が気にくわないと排除するようでは、
ジャーナリストを名乗る資格がないだろう。
反対意見を徹底して排除するのは、同人誌ならともかく、『Journalism[ジャーナリズム]』というのはおこがましい。
何より朝日新聞の現場の人が、色々な人を取材するとき、「朝日新聞は社の方針に合わない意見は排除するのだろう」と
取材先にいわれたら、取材ができなくなってしまうだろう。
昔のように、新聞なしで意見表明できない時代であれば、筆者の件は表面化しなかっただろうが、今はネットの時代で誰
でも意見をいえる。その上、ジャーナリズムの基本を踏み外した朝日新聞は、国民の知る権利に貢献しないメディアだ。
朝日新聞が「報道の自由」を主張しても、「掲載拒否の自由」の冗談かと思われるのではないか。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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ちなみに高橋氏は、「経済等の分野では不勉強な日本のマスコミは、まともな記事を書けないということ」を以下の記事で
言いたかったとのことです。

『現代ビジネス』9月8日、高橋洋一「ニュースの深層」より

以下、筆者が『Journalism』の依頼に応じて寄稿し、ボツになった原稿である。

◇リフレ派の勝利に終わった金融政策論争
アベノミクスは、金融政策(第一の矢)、財政政策(第二の矢)、成長戦略(第三の矢)から構成されている。成長戦略も面
白い論点であるが、本稿では金融政策と財政政策というマクロ経済学の分野に絞って論じたい。 (略)
まず、第一の矢の金融政策から述べたい。
はじめに学会ではどうなのかというと、金融政策については長い間論争の対象だった。主な論点は、①金融政策で物価を
コントロールできるか②金融政策によって生産や雇用の水準を高めることができるか③金融緩和を行うと財政破綻などの
大きな危険があるのかどうか、である。ここで、この点を詳しく論じるのは本稿の趣旨ではない。
幸いにも、金融政策について、顕著な効果があるということに肯定的で弊害が少ないという立場(リフレ派)の学者と、その
逆に、効果がなく弊害が大きいという立場(デフレ派)の学者の両方が共同で書いた本、原田泰・齊藤誠編『徹底分析アベ
ノミクス』(中央経済社、2014))が最近出版された。これまで、それぞれの立場の学者の書いた本はかなりあるが、両者の
立場の学者を含む、対比する形で書かれた本はなかった。日本でアベノミクスに関心が集まり、その検証をせざるを得な
くなったわけだ。筆者も、金融政策に肯定的な立場から、同書中に一つの論文を書いている。
同書と、これまでのデータ(特に消費増税を行うまで)を見ていただければ、どちらが正しかったかは明らかである。この意
味で、金融政策が有効かどうかという、いわゆるリフレ論争は一つの決着をみている。ここでは、日本アカデミズムにおけ
るリフレ論争を振り返っておこう。
筆者は1998年から2001年まで米プリンストン大学にいたが、知的刺激にあふれた時期だった。
前FRB議長のバーナンキ教授、2008年にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授らが、日本を題材にして非伝統
的金融政策を毎週のセミナーで侃々諤々と議論されていたのは面白かった。一言で言えば、金融緩和政策を大胆にやれ
ば、デフレから脱却できるというものだった。
2001年に帰国後、経済財政諮問会議を手伝うことになったが、その当時の日本のアカデミズムに驚いた。一部のマイナー
な人たち(今ではリフレ派といわれる)を除き、主流派の人たちは、クルーグマンらの言うことは信じてはいけないと公言し
ていた。
例えば、諮問会議の民間議員だった吉川洋・東大教授から「高橋さん、貨幣数量説を信じているの?」と言われたことも
ある。
それに対して、「マネーをマネタリーベースにすれば、通貨発行益があるので、長期的には成立すると思います」と答えた
が、吉川教授は否定的だった。
こうした学会を変えるように運動すべきという人もいたが、筆者は、頑迷固陋な学者を説得するには実社会で証明するほ
うが近道と考えていた。もちろん、米国アカデミズムの賢人たちと同じ考えだから、失敗はないという確信があった。
幸いなことに、小泉政権での竹中平蔵大臣や中川秀直自民党政調会長には、筆者の説明を納得してもらった。
2003年3月の日銀人事で福井総裁になったが、デフレ脱却を約束したため、量的緩和はすぐできた。ところが、ゼロ金利
になると、どんな金融政策も無効になるという主張が出てきて、量的緩和の足を引っ張るような動きになった。
齊藤誠・一橋大教授のブラックホール論だ。モデル式もあるので、日本のアカデミズムで受け入れられていた。
しかし、その論文を読むと、経済学大学院生にはわからないが、数学科学生なら簡単にわかる誤りがあった。
筆者はそれを2003年5月号『経済セミナー』(日本評論社)に書いた。齊藤教授はびっくりして筆者にメールを送ってきたが、
その中で筆者の指摘に再反論はなかった。もちろん、表での再反論もない。日本のアカデミズムでは、筆者のような行動
はあり得ず、「なかったこと」になっているらしい。
小泉政権での量的緩和は不徹底であったが、データ分析すれば日本経済に好影響を与えたことがわかる。だが、それす
ら日本のアカデミズムの主流派は怠った(数少ない例外は関西大学の本多佑三教授)。
前掲した『徹底分析アベノミクス』の編者の一人は、齊藤誠・一橋大教授である。同教授は日本を代表するマクロ経済学
者である。11年前に齊藤教授の批判論文を書いた筆者は、今回も金融政策に効果があったとし、齊藤教授の見解を否定
している。前回も今回も齊藤教授からは反論がない。ということは、長年にわたる日本におけるリフレ論争が、リフレ派の
勝利に終わったと筆者が考える所以である。

◇インフレ目標に言及しない朝日の編集委員
こうした状況において、メディアが果たす役割は何だろうか。学会において、学者が一つの立場を主張するのは、どのよう
な立場であれ、学者として理解できる。それが学者の本分である。それが間違っている場合には評判を失うという、学者
なりの責任の取り方になっている。これは、学者がサラリーマンではないからできることだ。しかし、メディアの場合、書き
手は殆どがサラリーマンである。筆者はサラリーマンでない個人で頑張っている人を知らないわけでないが、日本で個人
のフリージャーナリストはごく少数しかしない。多くは、会社に属しているサラリーマン・ジャーナリストである。そうしたサラ
リーマンであると、きちんとした個人の意見は出てこないし、個人で取れる責任もない。これでは事後検証しても意味がな
いことになる。
また、メディアの人は、きちんとした学問の訓練を受けていないために、高度な専門知識に欠けている。このため、学会で
も意見の割れるような分野をきちんと報道できない。ややもすると、学会で割れている意見の一方のみを過大に扱い、中
途半端な理解であたかも自分の意見のように書く場合もある。そうした実例として、朝日新聞編集委員の原真人氏が書い
て朝日新聞に掲載されたものを取り上げてみよう。2012年12月19日付の「高成長の幻を追うな〈政権再交代〉」である。
以下、一部を引用する。

〈自民党圧勝を受けた金融市場は新政権を歓迎し、安倍晋三総裁が望んだ円安・株高が進んでいる。だが市場は
しばしば誤ったメッセージを発するものだ。財政と金融の両方でお金をばらまこうという「アベノミクス」は、短期の
相場を考える金融市場の人々には心地よく響くが、日本の将来にとっては危うい路線である。
量的緩和政策はデフレ解消や成長促進への効果が薄く、副作用が大きい。それがこの10年、日本銀行が試み
を重ねた末に学んだ答えである。にもかかわらず、安倍氏はデフレ脱却のため日銀に「輪転機をぐるぐる回して
お札を刷る」よう求めている。このうえ際限なくお金をばらまけばどうなるか。経済は好転せず人々の給料が上が
らないまま、金利や物価だけが上昇しかねない。その先にはギリシャのような危機連鎖が待っている〉
〈民主党政権も理解していたとは言えない。「コンクリートから人へ」といいつつ、整備新幹線の着工など大型公共
事業を進める逆行政策が目立った。さらにそれを加速させんとする安倍氏には、「名目3%成長」という人口増時
代の高い潜在成長率の感覚があるようだ。日本が人口減少の成熟社会となった今、そこにこだわれば、政策の
ゆがみは大きくなる〉
〈新政権がアベノミクスにとらわれ続けるなら、持続可能社会の実現をさらに遠ざけるだけだ。そうなれば、私たち
は遠回りのコストをまた負担させられることになる〉

安倍総裁が、〈「輪転機をぐるぐる回してお札を刷る」よう求めている〉とし、〈このうえ際限なくお金をばらまけばどうなるか〉
と書く表現は、悪意に満ちた感情論である。
当時の安倍総裁は、「インフレ目標における目標のインフレ率を達成するまで、金融緩和を無制限に続ける」よう、世界標
準のインフレ目標政策を求めているだけだ。実際、この日本の世界標準政策は、ダボス会議などの国際会議などで賞賛
を浴び、ノーベル賞経済学者クルーグマン・プリンストン大学教授らの世界の経済学者からは高く評価された。
それだけでも原氏の論説は的外れであったのが明らかだ。もっとも、この部分は、上述したように、日本のアカデミズムに
も大きな責任があるが、その尻馬に乗った原氏の責任も免れないだろう。いずれにしても、なぜ原氏は「目標のインフレ率
を達成するまで」という部分を書かないのだろうか。この点について、当時の安倍総裁はきちんと発言しており、原氏が意
図的に発言を歪めたとしか思えない。さすがに原氏も、金融政策において、インフレ目標が日本以外の先進国で行われ
ていることを知っていただろう(もし知らなければ、このような記事を新聞に書く資格はない)。だから、「インフレ目標」に言
及したくないとともに、安倍総裁の真意を歪める報道をしたのだろう。
他にも、お粗末な記述はある。〈「名目3%成長」という人口増時代の高い潜在成長率〉という記述であるが、原氏は、日本
以外の先進国の名目経済成長率や人口増加率を知らないのだろう。そうした無知の下で、日本は人口減少なので経済
成長できないと思い込んでいるとしか思えない。原氏に限らず、日本のメディアのテータ・リテラシーはきわめて低い。
官庁のサイトからデータをエクセル形式でダウンロードし、グラフを書けるジャーナリストはきわめて少ない。筆者は役人時
代に記者クラブの記者たちの相手をしていたが、その中で、役所のサイトのどこに統計データがあるのかも知らない記者
ばかりだった。当然、そのデータを読み、グラフ化することもできなかった。
原氏の〈「名目3%成長」という人口増時代の高い潜在成長率〉という記述がいかにデタラメであるかを示すには、世界の
先進国の名目経済成長率と人口増加率を知ればいい。筆者が大学の講義で大学生に教えていることを紹介しよう。
こうした国際的な物を調べるのは、国際機関が便利である。どこでも似たようなデータベースを開放しているが、ここでは
国際通貨基金をとる。そのサイトの中に、World Economic Outlook Databasesがある。そこでは、先進国の名目GD
Pと人口数の時系列データがある。それらをダウンロードして、各国ごとに、名目GDPと人口について、各年の伸び率を計
算し2000年から2012年まで平均をとり、各国を一つと点として散布図にしたものが以下である。

経済成長率グラフ

これを見ると、日本の名目経済成長率は先進国の中で最下位の低水準であるが、他の国では3%どころか4、5%でも高
いほうではないことがわかる。しかも、日本より人口減少の激しい国も少なくないことがわかる。それらの国をみれば、名
目経済成長率は日本よりも高いこともわかる。
しかも、人口増加率と名目経済成長との相関係数は0.01と無相関である。ついでに、人口増加率とインフレ率も無相関で
あるので、人口減少がデフレとかいう人もいるが、データから見れば関係ない。
繰り返すが、この散布図は、筆者が大学で教えており、インターネットからのデータによって高校時代の偏差値は必ずしも
高くない大学生でも1、2時間ほどで作れるものだ。この程度のことで、今の新聞の記述はウソであると読者から見透かさ
れているのだ。

◇「財政破綻は原発事故や核戦争より可能性が高い」のウソ
次に、第二の矢の財政政策に関するメディア報道をみよう。ここでも原真人氏の書いた物がいい材料だ。
2013年7月28日付の「消費増税 デフレより怖い『先送り論』」を全文取り上げよう。

〈 日本の財政破綻リスクを警告したり、その対策を提言したりする報告書が、民間機関から相次いで出ている。
東京財団の加藤創太上席研究員ら官僚出身者たちのグループは、国債暴落から始まる経済危機が早ければ
数年内におきる可能性があるとして、政府の緊急時の資金繰りや銀行の救済策を提言した。
「原発事故でわかったように、政府には危機想定シナリオがない。財政破綻は原発事故や核戦争より可能性が
高いのだから、早く準備しておくべきだ」と加藤氏は言う。
日本総研の河村小百合主任研究員は、終戦時の財政破綻が庶民を襲った衝撃を調べた。預金封鎖、資産差
し押さえ、土地や国債、預金などあらゆる財産への最大90%の課税。「破綻したら、政府は同じことをやらざる
をえない」
それにしても、なぜいま財政破綻研究がホットなのか。日本の財政が先進国で最悪でも、国債価格は高値のま
まで、暴落論はオオカミ少年扱いだった。なのに、なぜ?
「アベノミクスが始まったからです」と河村氏。 日本経済はよかれあしかれ、デフレ状態でバランスしていた。
景気はよくないが、金利がすごく安い。だから政府は1千兆円の借金が苦にならず、毎年、歳出額の半分を借金
に頼っていられる。
その均衡をアベノミクスが崩そうとしている。日本銀行の物価2%上昇目標を実現すれば、金利が上がり、政府
の利払いも増える。仮に税収が増えても、借金1千兆円の金利負担の方がずっと重い。
地方も含めた政府の借金額はすでに国内総生産(GDP)の2・5倍と終戦時なみの窮状だ。近年これほどひどい
例はアフリカなど一部途上国にしかない。ずっとこのままですむはずはない。そう考えるのが道理だ。金利上昇の
見通しが強まって、改めてそこが焦点になりつつある。
国際通貨基金も、日本政府に財政改革を求めている。10年後までに必要な増税や歳出削減の規模を毎年度予
算で50兆円以上とみる。消費税なら20%増税分にあたる大きな負担である。ほかの国際機関も同様の報告書
を出している。そんな状況でも、安倍晋三首相は、来年4月の税率3%幅の消費増税についてさえ、「やる」という
最終判断を留保している。増税による経済への影響が、デフレ脱却に水を差さないかと不安らしい。
とはいえ、この期に及んで日本が2015年に消費税を10%にできなければ、金融市場は「想定外だ」とパニックに
陥るだろう。その衝撃と混乱の大きさは、増税の影響の比ではないのではないか。
あるエコノミストに「そうなったらどうする?」とたずねたら、真顔で答えた。「海外に移住するか、預金をすべて外貨
にしますよ」 〉

ひたすら増税を主張しているが、ここで、根拠となる事実のウラを取っていない。研究者の報告書から引用したという言い
訳はあるだろうが、簡単に調べることができる。
まず、「財政破綻は原発事故や核戦争より可能性が高い」を鵜呑みにしている。財政破綻の確率には、格好の経済指標
がある。それは、ソブリンもののCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のレートだ。各国の国債が破綻した時に保証しても
らう保険料のようなもので、そのレートが低いほど安全である。これは格付会社の恣意的な格付けと違って、金融機関が
身銭を切って市場で取引しているものなので、より客観的だ。
米国0.17%、英国0.19%、独0.20%、日本0.37%、仏0.40%、伊0.98%などとなっている(2014年8月29日現在)。
かつてギリシャは100%になったこともあり、保険がしない、つまりデフォルト状態だったことを示している。
この数字が50%であれば、2年間保険料を払うと破綻した時に保証してもらってトントンであり、2年に1回破綻するといって
もいい。それに比べて、日本の数字はラフに見積もっても200年間で1回あるかどうかのデフォルト程度だ。
これは、原発事故(数百年に1回)や東海沖地震(30年で90%の確率)より低いだろう。
この原理を知っていると、しばしば何年以内に日本は財政破綻するというロジックを破ることができる。
かつて、筆者も出ていたあるテレビ番組で、3年以内に破綻すると意見が出た。当時は東日本大震災のすぐ後だったので、
日本のCDSのレートが1.3%程度であった。これを紹介し、もし本当に日本が3年以内で破綻すると思っているなら、CDSを
買うべきだと言った。というのは、3年で4%近く「保険料」を払うことになるが、それで100%の「保険」がもらえるわけで、25
倍の高率配当になる確実な投資だからだ。今では、その当時よりも、市場関係者は日本が破綻すると見ていないが、中
長期的にはどうなのか。どのような経済情勢や経済政策が続いた場合、国債暴落につながる可能性があるのか。
財政破綻派は、さかんに国債価格が暴落するという。
それに対して、破綻をどのように定義するかが重要だ。メディアを含め、日本で論者といわれている人は感覚的な印象ば
かりで、確率的な表現ができない。破綻とは何年以内で何%と言わなければいけない。国債暴落も同じで、何年以内で
何%価格が下がるかと言わなければいけない。実は、名目成長率と名目金利との間には、殆ど同じという経験則がある。
この理論的根拠もなくはないのだが、この経験則は覚えておいていい。
仮に名目成長率が4%程度になると名目金利は4%程度になるが、それを2、3年後に達成した場合、今の長期国債の価
格は6割程度下がる。それを「暴落」と言うべきか。
なお、大恐慌の研究では、一時的な金利上昇を別にすると、大恐慌から脱出してもすぐには金利上昇がない。あるとして
も2、3年後だろう。これはデフレ脱却しても当分の間、設備投資は内部留保で行われ、外部資金が利用されるのはかなり
後になるからだ。

◇財政再建のカギはプライマリー収支
次に、〈日本銀行の物価2%上昇目標を実現すれば、金利が上がり、政府の利払いも増える。仮に税収が増えても、借金
1千兆円の金利負担の方がずっと重い〉という記述があるが、これは基本的な知識不足である。
まず、財政再建を言うときに、財政収支ではなくプライマリー収支を使う理由がわかっていないのだろう。実は、次のような
関係式がある。

(債務残高/GDP)の変化分=
-(プライマリー収支/GDP)-(名目成長率-名目国債金利)×(前期の債務残高/GDP)
・・・(*)

おそらく、この式を独力で導き出せるメディアの人は殆どいないだろう。中学レベルの数学力で導き出せるので、我こそと
思う人は挑戦してほしい。
財政再建とは債務残高対GDP比を発散(上昇)させないことなので、債務残高対GDP比の変化に着目しよう。

(*)の右辺の第1項から、
プライマリー収支を黒字化すると、債務残高対GDP比が減少し、
プライマリー収支が赤字化すると、債務残高対GDP比が増加し

右辺第2項から、
名目成長率>金利なら、債務残高対GDP比が減少し、
名目成長率<金利なら、債務残高対GDP比が増加する
ことがわかる。
ここで、名目成長率と名目金利は殆ど同じという経験則を思い出すと、プライマリー収支の動向が債務残高対GDP比に大
きく関係することがわかる。
これこそ、財政再建のカギは財政収支ではなく、プライマリー収支にあることを示している。ちなみに、債務残高そのものを
減少させるためには財政赤字を黒字化させる必要がある。
しかし、財政破綻を回避するためには、その必要はなく、債務残高対GDP比が発散(比率が継続的に上昇)しなければよ
く、そのためには、プライマリー収支が改善すればいいとなるわけだ。
なお、プライマリー収支の定義は、税収から歳出(国債費)なので、これには利払い費は含まれておらず、この意味でも利
払い費増加は気にする必要はない。
だから、原氏のように金利負担というだけで、まったく財政再建について無知であることを晒してしまう。
ついでに、以下の図のように、プライマリー収支は1年前の名目GDP成長率でほとんど決まる。だから、名目長期金利が
高くなっても名目成長率と同じ程度であれば財政再建の関係では全く問題なく、名目成長率が高くなればいいわけだ。

GDP成長率グラフ

◇「業界エゴ」で軽減税率求める新聞
メディアは財政再建を増税で行うと思い込んでいるが、それは間違いだ。実際、筆者が政権運営にタッチしていた小泉
政権では、増税なしでほぼ財政再建を行った経験もある。
プライマリー収支の実績について名目GDP比でみると、2003年度▲5.6%であったのが、2007年度に▲1.1%まで改善し
た。2008年のリーマン・ショックがなければ、2010年度には小泉政権での公約通りにプライマリー収支はゼロになっただろ
う。ちなみに、2007年1月の中期試算では、2010年度のプライマリー収支は0.2%と、財政再建が達成されるとされていた。
増税をすると、経済環境によっては名目成長率を低下させ、財政再建にはかえって遠回りになる。
財政再建を財政赤字のサステイナビリティの観点からいうのは正しい。しかし、その手段として増税よりも、主軸になるべ
きは経済成長なのだ。
原氏の文章はある意味で典型的なのだが、日本の新聞は「財政破綻」「増税」は好きだが、自分たちだけ「軽減税率」を求
めるので、読者からみれば浅ましくい。新聞業界は、消費税については軽減税率の適用を求めているという事実は、メ
ディアにとって不味い。軽減税率を言えば、真の意味での弱者対策にならない。富裕層が軽減税率対象品を購入すれば、
軽減税率の恩恵を受けられるからだ。軽減税率は業者のエゴである。だから、低所得者に対しては消費税負担の増加分
を何らかの補助金で支援するのが理屈上正しい。そのためには給付付き税額控除が最もやりやすい。
このため、欧州など消費税の先進国では、軽減税率はやめて給付付き税額控除で対応する動きがある。それなのに、新
たに消費税増税しようとする日本で、軽減税率の導入は周回遅れの政策である。
ここで新聞は、財政破綻を言い、消費税増税を主張しながら、自らの利益になる軽減税率を政府に嘆願するのは業界エ
ゴと批判されても仕方ないだろう。新聞業界は、軽減税率の補強のために欧米調査団を送っているが、こうした事実を
報道しないスタンスも読者の不信を買う。
アベノミクス報道から、メディアのいろいろな側面が見えてくるが、今やネットで国際的なデータや資料の入手もできるの
で、メディアの知識のなさや理解不足もすぐ露呈する。その一方で、業界エゴが見えてしまっては、メディアの将来も危う
いだろう。






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